全国的に夏の暑さが厳しくなる中、手軽に使えるハンディファン(携帯用扇風機)が大活躍している、という方も多いのではないでしょうか。
しかし、ハンディファンは使い方を誤ると、最悪の場合ケガをしたり、大きな事故を引き起こす原因になってしまったり…なんて可能性があるのです。
本コラムでは「ハンディファンの正しい使い方」や「ハンディファンを使う際の注意点」をご説明いたします。
ハンディファンは暑さに弱い!?
「今日も暑いからハンディファンを持っていこう!」
と炎天下で使っているそのハンディファン…。実は製品ごとに安全に使える温度が決まっています。
ハンディファンに限らず、モバイルバッテリーやガジェット類には『動作環境温度』があります。
『動作環境温度』は、最低何℃から最高何℃までの間なら安全に使えます、とメーカー側が定めている仕様です。
例えば、オウルテックのハンディファン OWL-HF04シリーズ では、動作環境温度を 0~40℃ としています。
*OWL-HF04シリーズの取扱説明書、p.8より
一方、オウルテックの OWL-HF02Rシリーズ では、動作環境温度を 0~35℃ としています。
*OWL-HF02Rシリーズの取扱説明書、p.4より
このように、同じメーカーが販売しているハンディファンでも、動作環境温度が異なる場合があります。
また『動作環境温度』ではなく 『動作温度範囲』など、メーカーによって名称が異なります。
使っているハンディファンの動作環境温度をしっかり確認して、製品に適した温度下で使いましょう。
『動作環境温度』を超えていなくても注意が必要
使用時に動作環境温度を超えていない場合も、注意が必要です。
ではここで、注意事項についてご説明する前に、汗と体温の関係について解説します。
お風呂上がりに汗をかいたままの状態でいたら身体が冷えてしまった、なんて経験はありませんか?
これらは『気化熱』という仕組みが関係しています。
人は体温が上がると汗をかきます。
この汗は自然に蒸発しますが、蒸発する際に皮膚の熱を奪っていくので、体温の上昇を防ぐ役割を果たしています。これが『気化熱』です。
つまり、汗をかくと体温が下がるのは『気化熱』が影響している、ということです。
では、汗と体温の関係を踏まえて何に注意すればいいのかというと、猛暑日におけるハンディファンの使い方です。
「あまりにも暑い日にハンディファンを使うと温風が出てきた」といった経験をした方もいるかもしれません。
その場合「より暑くなるからハンディファンをオフにした」ということであれば問題ありません。
ですが、そのまま温かい風に当たり続けると、汗が乾く一方で体温は下がりません。
また、身体が体温を下げるために汗をかこうとするため、温風を長時間当て続けると脱水症状を引き起こしたり、熱中症を引き起こしたりするリスクが高まります。
そのため、使う場所の気温が動作環境温度内であっても、ハンディファンの風が温かいと感じたら、ハンディファンの使い方を工夫しましょう。
猛暑日にハンディファンを使うコツ
「それでも暑いから使わないと夏場は大変…」
という方に、ハンディファンを効果的に使う方法をお伝えします。
それは、ハンディファンと濡れタオルや冷感グッズを組み合わせて使うことです。
少し濡らしたタオルを首に巻いてから、ハンディファンで首元に風を送ります。
すると、タオルの水分が蒸発し汗の代わりに身体の熱を奪っていくので、少しずつ体温が下がります。
濡らしたタオルで気化熱を利用して体温を下げる、といった仕組みです。
また、首には頸動脈という太い血管が通っているため、全身のほてりを効率よく冷ますことにつながります。
「でも、タオルやハンカチを濡らしたくないな」
という方は、霧吹きなどで肌に軽く水を乗せてから風を送ってみましょう。
すると、濡れタオルを使ったときと同じように気化熱を利用した効果が得られます。
霧吹きだと大きすぎる場合、5〜10ml程度のアトマイザーであれば、バッグのサイドポケットに入れても邪魔になりません。
アトマイザーだと少なすぎるけど、霧吹きを持ち歩くのはちょっと…という場合は、50ml前後のスプレーボトルはいかがでしょうか。
霧吹き、スプレーボトル、アトマイザーなどは、使用シーンや使用頻度を想定して選んでみてください。
夏にたくさん見かける冷感グッズと一緒にハンディファンを使用するのもおすすめです。
ボディシートで首や腕を拭いてから、ハンディファンで風を当てると、非常にすっきりするので爽快感を得られます。ただし、過度に身体を冷やしすぎないようにしましょう。
ハンディファンを使う際の注意点
ここまで、
・ハンディファンは安全に使える温度が決まっている
・効果的に身体を冷やすコツ
をご説明いたしました。
ここからはハンディファンを使うにあたり、さらに注意しなければならないことを解説します。
炎天下や直射日光のもとでの使用を避ける
充電して使うハンディファンは、内部にバッテリーが搭載されています。
炎天下や直射日光のもとでの使用は、内部のバッテリーを過熱してしまうため、安全上の観点から避けるべき使い方です。
あまりにも暑い場合はハンディファンではなく、折りたたみ団扇や扇子を使うことも検討しましょう。
最近ではハンディファンを持つ人が増えたことで、車内にハンディファンを置いたまま過熱されてしまい、事故が起きるという事例も報告されています。
同じくバッテリーを用いた製品のモバイルバッテリーは、過熱されると発火するおそれがあるといった危険性が徐々に浸透してきました。
ハンディファンもモバイルバッテリーと同様に、使い方を誤ると大きな事故につながる可能性が十分にあります。
内閣府政府広報のInstagramでも同様の注意喚起がなされていますので、そちらもぜひご覧ください。
雨水、海水、飲み物などの水分がつかないようにする
ハンディファンは持ち運びに便利なので、外出時には欠かせない、という方もいるのではないでしょうか。
そこで、このようなシーンを想像してみてください。
ハンディファンをバッグに入れて外出したあなた。今日はショッピングモールへ買い物に向かいます。
行くまでにあまりにも外が暑かったので、ショッピングモールに着くとすぐ自動販売機で冷たいペットボトル飲料を購入しました。
冷たい物を飲んで一息つけたあなたは、ペットボトルをバッグに入れて…
と、ここまではごく当たり前な動作に見えます。
ですが、このような場合に気をつけなければならないのが水滴(水分)です。
上記のシーンではペットボトルに付いた水滴を拭かずに、ハンディファンの入ったバッグに入れてしまいました。この行動がNGポイントです。
水滴などの水分がハンディファンの内部に入ってしまうと、内部バッテリーがショートして発火や爆発などの事故につながるおそれがあります。
(ショート:一気に大きな電流が流れてしまう現象。ショートによって大きな電流がバッテリーに加わると、バッテリーが発熱し熱暴走を起こしてしまう)
もちろん、飲み物だけではなく海水や雨水などでハンディファンが濡れてしまっても、ショートの危険性がぐんと高まります。
ハンディファンをレジャーやアウトドアに持ち出す際には、普段よりも取り扱いに注意が必要です。
また、このような危険性はハンディファンだけではなく、コンセントに挿して使う充電器やモバイルバッテリーにも当てはまります。
ハンディファンを始めとする機器を扱う際は、水分が中に入らないように注意しましょう。
ちなみに、オウルテックのハンディファンには、ショートを防ぐための保護機能(短絡(ショート)保護)を搭載しています。
安心してお使いいただける設計となっていますが、万が一のためにも水滴や水分でハンディファンが濡れないように注意して使いましょう。
柔らかな風 そよ風モード搭載 5段階風量調節・約9時間使用可能 オーロラカラー ポータブルミニファン OWL-HF04シリーズ
https://www.owltech.co.jp/product-top/cat_outdoor/hf04/
衝撃や圧力はNG!異常があれば使わない
ハンディファンに内蔵されたバッテリーは、衝撃にとても弱いです。
バッテリーに衝撃が加わると内部ショートが生じ、発煙や発火につながる危険性があります。
「使用中にハンディファンを落としてしまった」
という場合は使用を中止して、メーカーへお問い合わせください。
「落としたけど問題なく動きそう、電源もオンになるし大丈夫でしょ!」
と、そのまま使い続けてしまうと周囲を巻き込む事故につながるおそれがあります。
*引用元:消費者庁 - コラムVol.10 携帯用扇風機の扱いにはご留意を!
また、ペットを飼っている方も注意が必要です。
2024年8月にアメリカで、飼っている犬がモバイルバッテリーを噛んでしまい、モバイルバッテリーから出火し家が燃えてしまった、という事件もありました。
バッテリーを用いた製品は、衝撃に加えて圧力にも非常に弱いです。
いつの間にか少し凹んでいたりした、といったときは、異常を確認した時点で適切に廃棄するか、メーカーへお問い合わせいただくことをおすすめします。
充電するときも注意が必要
ハンディファンに用いられるバッテリーは、一生使える物ではなく消耗品です。
ハンディファンの充電やハンディファンの使用(充放電)を繰り返すことで、バッテリーが徐々に劣化していきます。
バッテリーが劣化すると、使用できる時間が短くなったり、バッテリー部分が膨らんでしまったりすることがあります。
そういった場合は使用を中止し、適切に廃棄するか、メーカーへお問い合わせいただくことをおすすめします。
※廃棄する場合はご自身で分解しないでください。誤ってバッテリーを傷つけてしまうと、発火などの重大な事故につながるおそれがあります。
また、満充電になったら充電をストップするようにしましょう。
満充電になっても充電を続けると、バッテリーの劣化を早める原因となります。
たまに「寝る前に充電しておけば、起きてからすぐ使えるから充電しておこう!」と耳にしますが、これはNGです。
ハンディファンを長くお使いいただくために、使用時間が極端に短くなっていないか、使用中に異常に熱くなったりしていないかを、時々チェックしましょう。
髪や指が巻き込まれないように
ハンディファンは首元や顔のほてりを冷ますために、近づけて使用することもあるかと思います。
その際、誤ってファン部分に髪が巻き込まれてしまうと大ケガにつながるおそれがあります。
さらに、人の多い場所で使用するときは、周りの人のことを考えて使いましょう。
例えば、人が多く乗っている電車内でハンディファンを使うとします。
そのとき周りを見ずに首元へハンディファンを持っていくと、近くの人の髪や衣類などを巻き込んでしまい、事故を引き起こす危険性があります。
*引用元:消費者庁 - コラムVol.10 携帯用扇風機の扱いにはご留意を!
首元以外にも腕や別の部分に風を当てる場合も、周りの物を巻き込んでしまう可能性があります。
必ず周囲を見て、安全を確認してからお使いください。
また、ハンディファンを他の人に渡す際は、必ず電源をオフにしてから受け渡しをしてください。
万が一ファン部分のカバーが破損していたり、カバーの隙間が大きく空いていたりすると、指などが羽根に巻き込まれてケガをする可能性があります。
ハンディファンの設置位置に注意する
暑い日のお出かけで、赤ちゃんの暑さ対策にハンディファンを使っている方がいらっしゃいます。
そういった場面では、ベビーカーにハンディファンが取り付けられていますが、この取り付け方にも注意点があります。
ベビーカーにハンディファンを取り付ける場合は、バーの部分ではなく天窓部分に取り付けましょう。
ハンディファンは風を送る方向が決まっています。
バーに取り付けてしまうと、地面で熱された空気が吸い上げられ、直接赤ちゃんに当たってしまいます。
そうなると熱中症になるリスクが高くなってしまいます。
また、バーは赤ちゃんの手が届いてしまう可能性があり、ハンディファンの動作中に指が巻き込まれてしまう危険性もあります。
そのため、ハンディファンを赤ちゃんが触れられない天窓部分に取り付けると、熱中症や事故のリスクを下げられます。
接触冷感ブランケットなどの冷感グッズも活用すれば、さらに熱中症対策に効果があります。
また、デスクでハンディファンを使う場合は、設置場所に工夫が必要です。
ハンディファンの風が顔(特に目元)に当たり続けると、ドライアイになる可能性があります。
風が目に当たらないように首元のあたりへ当てることをおすすめします。
氷などで背面をふさがない
「より涼しい風に当たりたい」と、保冷剤や冷感グッズをハンディファンの背面に当てて使う方がいらっしゃいます。
実は、この使い方…あまりおすすめできません。
ハンディファンは風を送る方向が決まっていることに加えて、動作時はモーターの回転や電気の消費などで熱が発生します。
風はファン部分の背面から取り込み、前面へ送り出す仕組みとなっています。
そのため、保冷剤や冷感グッズの取り付けで背面、つまり風の入口を塞いでしまうことにより、段々とハンディファンに熱がこもってしまいます。
結果としてハンディファンへ負荷がかかり、最悪の場合は故障につながる可能性があります。
また、保冷剤などは暑い場所では結露してしまうため、本体内部に水分が入ってしまう危険性もあります。
暑い日にハンディファンで涼しい風を感じたい場合は、猛暑日にハンディファンを使うコツをご参照ください。
おわりに
ハンディファンの使用にあたってのポイントを解説いたしました。
以下が本コラムのまとめです。
●安全に使える温度『動作環境温度』をチェックする
●『動作環境温度』内でも風が温かければ使用を控える
●暑い日は濡れタオルや冷感グッズを併用すると◎(身体の冷やしすぎには注意)
●以下には特に注意する
・炎天下や直射日光のもとでの使用を避ける
・雨水、海水、飲み物などの水分がつかないようにする
・衝撃や圧力はNG!異常があれば使わない
・充電するときも注意が必要
・髪や指が巻き込まれないように
・ハンディファンの設置位置に注意する
・氷などで背面をふさがない
暑い夏が続き、多くの人が使うようになったハンディファン。
お手軽に使える一方で、精密機器でもあるため使用上の注意事項が多く存在します。
また、暑い日は熱中症だけではなく脱水症などの危険もあります。
しっかりと食事や水分をとったり、我慢できない暑さであると感じた場合は屋内で過ごしたり、エアコンを点けるなど、体調管理には十分注意しましょう。
ぜひハンディファンを正しくお使いいただき、少しでも快適な夏をお過ごしください。