今では誰もが持っているであろうスマートフォン。
現在、携帯電話を持っている世帯保有率は90%以上と、非常に多くの人がスマートフォンを所持・利用しています。
(*引用元:総務省『令和6年版情報通信白書』第Ⅱ部 情報通信分野の現状と課題 第11節 デジタル活用の動向 - 1 国民生活におけるデジタル活用の動向)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd21b110.html
また、外出時の充電にとても役立つことから、スマートフォンとセットでモバイルバッテリーを持っている方も多いのではないでしょうか。
ですが、あなたがお使いのモバイルバッテリー、安全性に問題はないでしょうか?
近年では、モバイルバッテリーの発火事故や安全性についてのニュースがたびたび報道されています。
事故の様子を見て「モバイルバッテリーを使うことが怖くなった…」という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、本コラムではモバイルバッテリーが発火する理由や、安心して使えるモバイルバッテリーの選び方について解説いたします。
どうしてモバイルバッテリーから火や煙が出るの?
「そもそもモバイルバッテリーって火や煙が出るの?」
実はそうなんです。
ライターやガスコンロのようにメラメラと火が燃えることはないので、イメージしにくいかもしれません。
もちろん、取扱説明書の使用方法や製品仕様の範囲で使うのであれば、そのような事態には陥りません。
普段から正しく取り扱っていれば、危険度は限りなくゼロに近づきます。
「そういえばモバイルバッテリーのニュースで、煙や火が出たって内容が多い気がする…」
と思った方、いい着眼点です。
もちろん電気を使用する製品には、使い方を誤ってしまうなどで発煙・発火するリスクが付き物です。
その中でもモバイルバッテリーは、リチウムイオン電池を用いた製品であることが重要です。
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、爆発などの大きな事故につながる危険性が高いのです。
モバイルバッテリーが発火、発煙する主な原因として
・粗悪品や長期使用品の「低い品質」
・気温などによる「環境の変化」
・衝撃や圧力などによる「ダメージ」
が挙げられます。
ここでは、それぞれの原因についてご説明いたします。

そのモバイルバッテリー、安心して使えますか?
モバイルバッテリーが発火、発煙する主な原因として、1つめに「低い品質」があります。
お使いのモバイルバッテリーは「安いから」という理由で購入しませんでしたか?
安価なモバイルバッテリーの中には、保護機能が簡素だったり、場合によっては保護機能そのものがなかったりする物があります。
保護機能以外では「セル」の品質も関わってきます。
セルとは、モバイルバッテリーに搭載されているリチウムイオン電池を構成するパーツです。
このセルが粗悪な品質であれば、モバイルバッテリーが劣化しやすく、落下などのダメージにより異常な発熱や発火が起きるリスクが高くなります。
ですが、セルの良し悪しは購入時にはほとんど見分けることができません。
そのため、保護機能を搭載している、もしくはメーカーが安全性の確認をしっかりと行っているといったモバイルバッテリーを選ぶことが重要です。
また、お使いのモバイルバッテリーは、長期間使い続けていませんか?
モバイルバッテリーは消耗品です。
長い間使っていると、リチウムイオン電池の中にある「電解液(電解質)」という物質が劣化します。
この電解液の劣化により、ガスが発生します。
ガスが発生し続けると、次第にモバイルバッテリーが膨らんでいきます。
膨んだモバイルバッテリーからすぐに火が出る、というわけではありません。
しかし、膨らんだ状態で衝撃や圧力が加わると、爆発などの重大な事故につながるおそれがあります。
また、バッテリーが膨らんでいない状態でも、
・使用中、異常に熱をもつ
・モバイルバッテリーを充電する時間が購入時よりも長くなった
・スマートフォンを充電する時間が購入時よりも長くなった
・モバイルバッテリーから異音や異臭がする
という症状が見られた場合も、モバイルバッテリーが劣化しているサインです。
このような普段あり得ないような異常は、モバイルバッテリーからのSOSです。
SOSを放置して使用し続けることでも、重大な事故を引き起こすリスクが高まるのです。

暖かすぎても寒すぎても劣化につながる
モバイルバッテリーが発火、発煙する主な原因の2つめは「環境の変化」が関わっています。
リチウムイオン電池には電解液という物質が入っている、とご説明いたしました。
この電解液には、多くの場合で可燃性の有機溶剤が用いられているのです。
「可燃性の有機溶剤って何?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
一例を出すと、シンナーや灯油などが挙げられます。
これらが直接リチウムイオン電池に用いられているわけではありませんが、燃えたら大変なことになるのはイメージしやすいかと思います。
電解液には可燃性の有機溶剤が用いられているため、高温下、特に真夏の炎天下、暖房機器のそばなど、高温に長時間さらされると発火するおそれがあります。
ちなみに、モバイルバッテリーは高温だけではなく、低温にも弱いため注意が必要です。
「冬場はスマートフォンの充電が早く減ってしまう」
といった経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。
これは、低温の状態だと電解液が本来の性能を発揮できなくなるからです。
そのため、充電が遅かったりバッテリーの減りが早くなったりする、といった現象が起きてしまうのです。
極端に温度差がある場所では結露が発生してしまい、『ショート(短絡)』が起こる危険性もあるため、注意が必要です。
『ショート』とは、一度に大きな電流が生じる現象を指します。
この現象によって急激な発熱などが引き起こされると、電解液が発火する可能性があります。
結露以外にも、水分の付着した手でモバイルバッテリーを使うなどで、充電ポートから内部へ水分が入ると『ショート』するおそれがあります。
子どもやペットがモバイルバッテリーを舐めたりして、唾液が付着してしまうケースもあります。
「濡れたものを触ってないから大丈夫!」
といった場合でも、温度差が大きい場所を移動することで結露が発生する可能性もあります。
もちろん、湿度が高い環境(水周り)でも注意が必要です。
これはモバイルバッテリーに限らず、電気を使う製品全般に対しての注意点です。
浴室やキッチンなどでは使用を控えるようにしましょう。

衝撃や圧力でモバイルバッテリーにダメージが
モバイルバッテリーが発火、発煙する主な原因の3つめが「ダメージ」です。
モバイルバッテリーは精密機器です。
落としてしまったり、物がぶつかったり、過度な圧力がかかったりすると、バッテリー内部が損傷してしまいます。
このようなダメージにより『ショート』が発生し、発煙や発火などの重大な事故につながるおそれがあります。
「バッグから出そうとして落としちゃった」
「あれ、モバイルバッテリーがいつの間にか凹んでる?」
などの、普段とは異なる状態を確認した場合は、安全のため使用を避けましょう。
また、興味本位で分解して中を見る、ということも避けてください。
モバイルバッテリーを分解した際に内部のリチウムイオン電池が傷つくと、最悪の場合その場ですぐに煙や火が出ることがあります。
万が一火が出てしまったら…
もしも、モバイルバッテリーから発煙または発火すると、非常に速い勢いで煙や火が出ます。
煙は化学的な臭いがするため、多量に嗅いでしまうと体調に影響を及ぼす可能性があります。
電車やバスなどの公共交通機関を利用している場合は、運行が遅延してしまうでしょう。
また、自宅で火災が発生した場合は、自分の物に限らず、周囲の物が燃える甚大な被害が生じる可能性も考えられます。
もちろん、物が燃えるだけではなく、やけどを負うことも考えられるため、非常に危険です。
なお「東京消防庁」からは、モバイルバッテリーなどが発火した場合について、以下の内容が発表されています。
【万が一発火した時には】
電池から煙や火花の飛び散っているときには近寄らず、火花が収まってから消火器や大量の水で消火するとともに119番通報してください。
(*引用元:東京消防庁 - リチウムイオン電池搭載製品からの出火が過去最多 ~充電中以外の火災にも注意!~/令和6年7月12日)
また「独立行政法人 製品評価技術基盤機構 nite」では、以下の解説と併せてホームページに動画を公開しています。
モバイルバッテリーが膨らんでしまった際は、金属製の容器にふたをして密封してください。万が一発火などした場合、周囲への延焼被害を低減することができます。
※専門家が実験を行っております。大変危険ですのでマネしないでください。
(*引用元:nite - モバイルバッテリー「5.異常発生時の対処」)
とはいえ、発火・発煙が起きない、または起こさないことが最も大切です。
このような事故を予防するために、日頃からできる「モバイルバッテリーの正しい使い方」を解説いたします。
安全にモバイルバッテリーを使うには
「モバイルバッテリーってそんなに危ない物なんだ…」
「使うのが怖くなった…」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、事故につながる場面では
・安全性の低いモバイルバッテリーを使っていた
・日頃からモバイルバッテリーにダメージが加わっていた
といったケースが多く見受けられます。
また、きちんとメーカーで検査や安全性を確認していれば、そのようなリスクは限りなくゼロになります。
そのため、事故を予防するためには
・安心、安全に使えるモバイルバッテリーを選ぶ
・取扱説明書(注意事項や使用方法)をよく読んで正しく扱う
ということが重要です。
高品質のモバイルバッテリーを選ぼう
まず大切なのは、品質の高いモバイルバッテリーを選ぶことです。
「どんなモバイルバッテリーがいいの?」
「安全なモバイルバッテリーを一目で見分ける方法は?」
という方におすすめな、購入前に確認するポイントをご紹介いたします。
・『PSEマーク』がある
・保護機能が搭載されている
・問い合わせ先が一目でわかる
・新品である
1つめにある『PSEマーク』は、日本の法律で定められた技術基準に適合していることを示すマークです。
日本では「電気用品安全法」という法律が定められています。
この法律に基づき、日本でモバイルバッテリーを販売する際は、メーカーや輸入事業者が安全に使えるかを、自主的に検査する義務があります。
そして、検査義務を果たしたモバイルバッテリーであることを示すものが『PSEマーク』です。
最低限『PSEマーク』があるかどうかを購入前にチェックしましょう。
2つめにある「保護機能」は、万が一『ショート』などが発生しても、事故を予防する機能です。
主な保護機能には以下が挙げられます。
・過充電(電圧/電流)保護
・過放電(電圧/電流)保護
・短絡(ショート)保護
・温度保護
このような保護機能を搭載しているモバイルバッテリーであれば、万が一の事態が起きることを防止してくれます。
3つめの「問い合わせ先が一目でわかる」ことも、意外と重要です。
昨今ネットショッピングを利用するシーンが増えたことで、さまざまな販売店から商品を購入できるようになりました。
もしも、商品に不具合があったり、保証対応の問い合わせをしたりする場合に、きちんとしたサポートを受けられるかどうかも安全性の面では大切なのです。
4つめの「新品である」も「問い合わせ先が一目でわかる」ことと同じくらい重要です。
中古品は新品を購入するよりもお財布に優しいかもしれません。
ですが、受け取り前にどれだけ使用されていたか、使用状況が分からず事故のリスクにつながることもあります。
特に頻繁に落としていたり、劣悪な環境で保管していたりなど、販売される前に大きなダメージを負っている可能性もゼロではありません。
また、メーカーの保証対象外となることも多いことから、新品の購入をおすすめいたします。
なお、オウルテックのモバイルバッテリーは、以下の特長があります。
・PSE適合製品(PSEマークあり)
・各種保護機能を搭載
過充電(電圧/電流)保護、過放電(電圧/電流)保護、短絡(ショート)保護、温度保護
・1~2年の長期保証
また、オウルテックでは販売前のモバイルバッテリーで、セル品質の検査を始めとする入念な検証を行っております。
「安心して使えるモバイルバッテリーを探している」
という方は、ぜひ製品一覧からお好きなモバイルバッテリーをお探しください。
https://www.owltech.co.jp/product-top/cat_mobile-battery/

取扱説明書をよく読んで使う
モバイルバッテリーに限らず、製品には取扱説明書が付属しています。
最近は、インターネットで製品ページから取扱説明書を見る、といった機会も増えています。
そういった取扱説明書には、使用方法の他に安全上の注意事項が書かれています。
多くのモバイルバッテリーでは主に以下の注意事項が記載されています。
・使用中に異常が発生したら使用を中止する
・落下などの強い衝撃や圧力など、過度な力を与えない
・ポケットや鞄、布団の中などで使わない
・製品仕様にある使用温度範囲で使う
・高温の場所で使用、保管、放置しない
・水気(多湿)を避ける
・近くに可燃物を置かない
・子どもやペットの近くで使用、保管しない
ここで大切なポイントは、注意事項のいずれもが冒頭にご説明した
・粗悪品や長期使用品の「低い品質」
・気温などによる「環境の変化」
・衝撃や圧力などによる「ダメージ」
に関連しているということです。
なお、上記の注意事項が必ずしもすべてのモバイルバッテリーに当てはまるわけではありません。
製品ごとに付属の取扱説明書をよく読むことが大切です。
おわりに
・どうしてモバイルバッテリーから火や煙が出るのか
・安全にモバイルバッテリーを使うには
について解説いたしました。
以下が本コラムのまとめです。
・モバイルバッテリーが発火、発煙する原因は主に3つ
1. 粗悪品や長期使用品の「低い品質」
2. 気温などによる「環境の変化」
3. 衝撃や圧力などによる「ダメージ」
・万が一火が出てしまったら身の安全を確保して、できる限りの行動を
・安全にモバイルバッテリーを使うポイントは主に2つ
1. 品質のよいモバイルバッテリーを選ぶ
2. 取扱説明書(注意事項や使用方法)をよく読んで使う
気をつけることが多い一方で、モバイルバッテリーはスマートフォンには欠かせない存在になりつつあります。
皆さんも使い方に注意しながら、快適なデジタルライフを過ごせるようにモバイルバッテリーを活用していきましょう。